北広島にこやか遺言相続相談室

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Q 相続人の中に認知症の者がいますが、実印と印鑑証明書を押して進めてよいでしょうか?

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■後で無効を主張されるおそれあり

認知症といっても程度はさまざまです。
ここでは次のようなケースを想定してお答えします。

1.遺産分割という法律行為を理解できないレベルのもの
(難しい言葉では「意思無能力」といいます。)
2.成年後見人等が就いていない
3.遺言がない

民法3条の2では、意思無能力の方が行った遺産分割は無効とされています。

民法3条の2(意思能力)
 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

ですので、家族が本人に無断で遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を添付して不動産の名義変更や預貯金払戻をしたとしても、後で無効とされるおそれあります。
「本人が認知症なのだから、無効と主張することはありえないのでは?」
と思うかもしれませんが、例えばその方に後日、成年後見人が就いたり、その方が亡くなって、今回の相続人とは違う方が相続人となった場合には、可能性としてありえます。

ではどうしたらいいのでしょうか?

■成年後見人を就ける

成年後見人という、財産管理を本人に代わって行う人を家庭裁判所に申し立てて選任することが考えられます。
ただこの成年後見人、デメリットも結構あるんです。

1.親族が希望しても必ずしも後見人になれるとは限らず、弁護士・司法書士といった専門職が就くこともある。

 親族を候補者として申し立てることは可能ですが、最終的には家庭裁判所の職権で後見人を決めます。
 したがって家族が責任をもってご本人の財産を管理しているようなケースでは、感情的な不満が拭えないかも知れません。

2.月2万~+αの報酬が発生する。

親族の場合は「報酬なんていらないよ、身内なんだから」ということであえて報酬を請求しないということもありえますが、専門職後見人の場合は仕事としてやる以上、これは発生すると思ってください。
ちなみに報酬額は家裁が決定します。

3.遺産分割が終わったから終了、というわけには行かず、原則として亡くなるまで外せない

したがって、「以前から後見人を就ける必要性を感じていたので、これを機会に…」というケース以外では、不満が残るかも知れません。

4.大きな支出や本人のためにならない支出は、都度、家庭裁判所の相談・許可が必要となる

 「本人のためにならない支出」とは、例えば家族に何かを買ってあげることです。

 後見制度やその運用については、一部からだいぶ批判を受けていますが、現状はこうなっているんです、と言わざるをえません。

正直なところ、成年後見人を就けるのはかなり「面倒」だと私自身も思っています。
他に方法がないわけではありませんが、ケースバイケースのかなり微妙な判断となりますので、詳しくは専門家にご相談ください。

■事前に回避する方法は?

ではこのようなことが起こる前に、回避する方法はないのでしょうか?
次のような方法が考えられます。

・自分が亡くなった場合、認知症の方が相続人となる可能性がある場合に備えてできること

1.遺言

遺言で誰が何をもらうのか指定しておけば、そもそも遺産分割が不要になります

2.生前贈与

主要な財産を生前に贈与しておけば、その財産については遺産分割が不要になります

3.家族信託(民事信託)

これらの対策は、どれか択一ではなく、複数組み合わせて使うこともあります。
例えば生前贈与で主要な財産である不動産を渡しておき、預貯金については自分の生活もあるので、遺言で亡くなった後渡す、という形です。

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