北広島にこやか遺言相続相談室

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Q2-7 いったん遺産分割をしましたが、やり直したいと思います。可能ですか?

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■相続人全員の合意があれば可能

いったん遺産分割協議をした後、「やはり違う形の分け方にしよう」とやり直すことはできるのでしょうか?

結論から言うと、下記のような判例があるため、相続人全員の合意があれば可能です。

最高裁判所平成2年9月27日判決
共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる

ご注意いただきたいのは、あくまでも全員の合意によるものということです。
一人でも反対している場合はできません。

■実際の登記手続はどうなるか

では1回目の遺産分割に基づいて、既に相続登記を入れてしまっていた場合はどのような手続になるのでしょうか?
次のように場合分けされます。
※被相続人A名義の不動産につき、相続人B、C(法定相続分各2分の1)という事例で説明します。

ケース1 1回目の遺産分割に基づいてAからBへの相続登記がされているものを、やり直し(2回目)の遺産分割によりCが相続することになった場合
→2件の登記申請となります(登記研究479-125)
1.B名義の相続登記を抹消
2.AからCへの相続登記

ケース2 1回目の遺産分割に基づいてAからB・C共有への相続登記がされているものを、やり直し(2回目)の遺産分割によりCの単独所有にすることになった場合
→2件の登記申請となります
1.B・C共有名義の相続登記を抹消
2.AからCへの相続登記

ケース3 1回目の遺産分割に基づいてAからBへの相続登記がされているものを、やり直し(2回目)の遺産分割によりB・Cの共有名義にすることになった場合
→2件の登記申請となります(登記研究479-125)
1.B名義の相続登記を抹消
2.AからB・Cへの相続登記

ケース4 1回目の遺産分割に基づいてAからB・C共有への相続登記がされているものを、やり直し(2回目)の遺産分割によりCの単独所有にすることになった場合
→1件の登記申請となります(昭和29.12.27民甲2759号)
1.BからCへの共有物分割登記

なおケース1~3において1回目の相続登記をした後、抵当権設定登記などが入っている場合には、その抵当権者の承諾書が必要になります。
なぜなら相続登記を抹消することによって、抵当権の登記も消えてしまうからです。
しかし債務を全て完済しない限り、抵当権者である銀行などがこのような承諾書を発行することは、現実的にまずないと考えてよいでしょう。

<ちょっと高度な話…一般の方は読まなくて結構です>
登記のことを勉強している方の中には、「ケース2~4は所有権更正登記ができるし、その方が登記費用も安いのでは?」という方もおられるかも知れません。
しかしそのようなことができるとした先例や通達はないため、少なくとも上記に示したやり方が確実と思います。
なお法定相続分による相続登記を入れてから遺産分割をした場合は、遺産分割を原因とする持分移転登記をする方法(昭和28.8.10民甲1392号)と、所有権更正をする方法(平成21.2.20法務省民二500号記録例236)がありますが、このケースは遺産分割をやり直したわけではないので認められるものと思われます。

■贈与税に注意

もう1点ご注意いただきたいことは、贈与税が課税される可能性があるということです。
例えば1000万円相当の遺産を相続人Aが単独で取得した後、遺産分割をやり直してAB各500万円ずつとした場合、AからBへ500万円の贈与があったものとしてBに課税されます(相続税法基本通達19の2-8)。
なおBに不動産取得税はかかりません(最判昭和62年1月22日)。

■その他、やり直しができるケース

他にもやり直しができるケースがあります。
例えば相続人Aが相続人Bを騙したり、脅したりしてしたのであれば、Bから取消を主張することが可能です。
また相続人の中に認知症の方がいた場合には、意思無能力を理由に遺産分割が無効と主張しうる余地があります。
ただしこれらのケースは、素直に相手の相続人がやり直しに応じる可能性が低いため、弁護士への依頼をお勧めします。
なお債務不履行(例:Aが不動産を相続代わりに、AからBに代償分割金を払うという協議内容だったのに、Aがそれを履行しない)を理由とした遺産分割のやり直しは認められません(最判平成元年2月9日)。

■費用の目安(税抜)

            報酬(税抜)       実費
所有権抹消    2万0000円~  不動産1個につき1000円
相続登記     3万5000円~  評価額×0.4%
遺産分割協議書  1万0000円~
相続関係説明図  1万0000円~

※戸籍類や相続関係説明図は、前回登記したものが残っていれば、再度集める必要はありません。

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