Q 不動産の相続登記が義務化されるのですか?
■2024年4月1日から義務化されます
はい、2024年4月1日から(改正附則第1条第2号・2021年12月14日閣議決定)
義務化されます。
この度、不動産登記法が改正され、相続登記が義務化されることになりました。
どのような方が対象になるのでしょう?
条文には
「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内」
とあります(改正不動産登記第76条の2第1項)。
つまり、
自分が相続人となる相続があったこと
に加えて
その遺産の中に不動産が含まれること
を知ったときから3年です。
つまり…
例1
父が亡くなってから10年経ってから、風の便りで亡くなったことと+不動産を持っている知った場合
→知った時から3年
※父子生き別れのケースなどではありえます
例2
10年前に父が亡くなったことは当時から知っているが、実は不動産を持っていることは知らなかった場合
→不動産を持っていることを知った時から3年
※原野商法で買わされた土地などは固定資産税もかからず、所有していたこと自体を知らないことがありえます
というふうにカウントします。
■罰則は?
では罰則はあるのでしょうか?
あります。
10万円以下の過料です。
(改正不動産登記法164条)
「過料」(かりょう)はあまり聞き慣れない言葉かも知れませんが、行政罰の一種です。
誤解があるのですが、罰金(1万円以上の金銭罰)とは違います。
罰金というのは刑法を犯した時に適用される罰ですが、過料は行政罰ですので、前科はつきません。
また同じ音の「科料」(かりょう・1万円未満の金銭罰)とも違います。
※過料は「あやまちりょう」、科料は「とがりょう」という言い方で区別することがあります。
さらにこの罰則、法改正後に発生した相続だけでなく、法改正以前から発生した相続の登記についても適用されることとなります(改正附則第5条第6項)。
実際には施行から3年は履行期間が設けられます。
つまり改正のあった2021年から数えると、2027年3月31日までは猶予があることになります。
ですが、6年なんてあっという間です。
その間に、
1.相続人の気持ちの変化
2.相続人が更に亡くなる数次相続
3.相続人が認知症となり遺産分割自体ができなくなる
などの問題が発生すると、さらに手続は複雑化しますので、現時点で相続が発生している方はなるべく早く登記することをお勧めします。
■義務化の背景には所有者不明土地問題
なぜそんな負担を国民に強いてまで登記を義務化するのでしょうか?
それは現在、日本では国土の約20%、九州と同じくらいの面積の土地が、所有者不明となっているからです。
これが公共事業で土地買収する際の支障になる等の弊害に繋がっています。
そして、所有者不明の大きな原因の1つに、長年、相続登記がされていない、ということがあることがわかったからです。
ある機関※によれば、この状態を放置すると、2017年~2040年の約20年で、経済的損失約6兆円が見込まれると試算されています。
※所有者不明土地問題研究会「最終報告概要」より
こうした背景があって、この度、義務化が決まったのです。
改正前にアップしたYouTube動画ですが、概ね改正法と変わらないのでご覧ください。
■実は逃げ道あり
「なぜ国に登記を義務付けられなければならないのか、余計なお世話だ」
「登記されないのは価値のない土地だからでは?」
「相続人の仲が悪くて遺産分割協議に時間がかかり、その間に3年過ぎたらどうするのか?」
色々とご不満、ご不安はおありと思います。
ですが、ご安心ください。
実はこの罰則には「逃げ道」が用意されているのです。
それはこちらのページで説明しています。