北広島にこやか遺言相続相談室

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Q 住所変更登記が義務化されるのですか?

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■2024年頃を目処に義務化されます

はい、ご指摘の通り、2026年頃を目処に、住所変更登記が義務化されます。

まず、前提として、不動産の登記簿がどのようになっているのか見てみましょう。


※もちろん架空の登記簿です。

このように、登記簿には名義人の住所・氏名が記録されています。

ではこの名義人が引っ越し、住所変更登記をしたら、登記簿はどうなるのでしょうか?

こうなります。
ですがこの変更は、あくまでも住民票の移転とは別に、法務局に別途申請する必要があります。
住民票は市区町村、登記は法務局という国の機関だからです。
その代わり、住所変更登記について、現在は期限も罰則もありません。
それが今回、罰則つきの義務となりました。
なぜでしょう?

■相続登記にも影響する「住所変更登記放置問題」

これは相続登記義務化の理由ともつながるのですが、所有者不明土地問題です。
「所有者不明土地の主な発生原因は、相続登記や住所変更登記の申請が義務ではないことにある」※1とされ、用地買収等の妨げになっているとされたためです。
期限は住所移転から2年、罰則は5万円以下の過料です(改正不動産登記法第76条の5・164条)。

実はこの「住所変更登記放置問題」は、相続登記の際にも面倒を引き起こすことがあります。
被相続人(亡くなった方)の相続登記をする際、登記簿上の住所(多くは売買・相続した時点の住所)が死亡時の住所と異なる場合、その過程の住民票(または戸籍の附票)を全て添付しなければならないのです。
これは登記名義人と相続証明書の被相続人の同一性を確認するためです。
ところが2019年6月20日まで、住民票の保管期間は5年※2でした。
つまり何十年にも渡り、複数回の転居を重ねている方の場合、この証明書が入手できないのです。

「それじゃあ引っ越しを重ねた人の不動産は相続登記できないということか?」

という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。
ただその場合は、申請対象の物件について被相続人の登記済証(権利書。相続登記では本来不要)や、相続人全員の上申書を添付するなどの方法が取られています。
しかもこの方法は、各地方の法務局によりバラバラ。
我々、登記のプロである司法書士でさえ、普段申請しない管轄法務局に申請する際には、この点についてその地元の司法書士に確認したりする有様なのです(よくこんなカオスな状態を長年放置しているものだと呆れます)。

不動産所有者は、引っ越しのたびに面倒と少しのお金(1物件1000円)が必要となります。
特にアパートオーナーさんのように、あちこちに数多くの物件をお持ちの方は大変かも知れません。
ですが、亡くなった後の相続登記をする家族に面倒をかけさせないためと割り切って、今回の住所変更登記義務化にご対応いただきたいと思います。

※1 法務省民事局民事第二課・参事官室「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し【民法等一部改正法案・相続土地国庫帰属法案の概要】」(令和3年3月)より
※2 改正・施行前に破棄してしまった住民票は原則、取得できません。現在は150年に延長(住民基本台帳法施行令34条1項)

■施行以前の住所変更も義務化の対象

この改正で注意しなければならないのは、2024年頃施行(予定)以前の住所変更も義務化の対象ということです(附則第5条第7項)。
つまり既に登記簿上の住所から引っ越している方は、忘れないうちに住所変更登記をした方がよい、ということです。
特に多くの物件をあちらこちらに持っている方、登記簿上の住所がどうなっているのかも忘れてしまった方などは、ぜひ司法書士にご相談ください。

■補足

1.改正法には、登記名義人(個人)に関しては、法務局が住民基本台帳ネットワークシステムを元に、職権+本人からの申出で登記することができるという規定があります(改正不動産登記法第76条の6)。
ただこの規定が実際、どのように運用されるのかまだ情報がありません。
したがって「黙っていても法務局が勝手に変更登記してくれるんでしょ」と断定することはお勧めしません。
2.住所変更について書いてきましたが、氏名の変更も同様に義務化されます。

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