Q 相続登記が相続人一人からの簡易な申請できるようになるのですか?
■典型的な誤解
典型的な誤解です。
結論から言うと、相続人一人からの簡易な申請は、できません。
相続登記義務化のニュースが出た直後、SNSでの一般の皆さんの反応を見ると、非常に誤解をしている誤解をされている方が多いように見受けられました。
これははっきり申し上げて、マスコミの報道のしかたにも問題があると思っています。
誤解の原因はわかっています。
今回の改正で新設される「相続人申告登記」の存在です。
■相続人申告登記は過料を逃れるための”一時しのぎ”
今回の相続登記義務化では、原則3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の過料を科されるおそれがあります。
※詳しくはこちらで解説
ここで問題があります。
例えば遺産分割が上手く調わず、揉めている間に3年が経ってしまったらどうなるのでしょうか?
相続登記に向けて善処しているのに、時間がかかっているというだけで過料を科されたのではたまったものではありません。
改正の議論の時から、この点は問題になっていました。
そこで「遺産分割等が未了でも、相続人の誰か一人から申告をすれば、ひとまず過料だけは逃れらるようにしよう」ということになりました。
※この案は司法書士からの提案とのことです
それがこの相続人申告登記なのです。
つまり、過料を逃れるための一時しのぎの逃げ道に過ぎないのです。
もちろん本来行われるべき「相続登記」(相続を原因とする所有権移転登記)とは全くの別物です。
にもかかわらず、「相続人一人からの簡易な方法による登記もできるようになる」という中途半端なマスコミの報道により、多くの方が誤解することとなってしまいました。
■あくまでも遺産分割した上での相続登記を
相続人申告登記をしただけでは、所有権が移転したことの証明にはなりません。
よってその状態では、その不動産を売ることも事実上、できません。
なぜなら相続人から買主への所有権移転登記(名義変更)ができないからです。
名義を得られないことがわかっている不動産を買う人はまずいないでしょう。
ですので、相続人申告登記で過料を逃れた後も、遺産分割が調うよう、弁護士等に依頼するなどして、なるべく早く遺産分割を調え、本来行うべき相続登記ができるようにしてください。