北広島にこやか遺言相続相談室

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Q 夫の債務については息子が全て負うと話し合いで決めたので私は相続放棄したことになりますよね?

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■それは相続放棄ではありません

よくある誤解です。
しばしば相談を受けるのは次のような事例です。

夫Aさんが亡くなりました。
相続人は妻である私Bと長男C。
夫Aには1000万円相当の不動産と1000万円の借金がありましたが、二人は話し合い、そのどちらもCが相続することになりました。

Cはしばらく借金を約束通り返していましたが、リストラにあい返済不能に。
債権者は私に言いました。
「奥さん、残債務の半分を払ってください」

どうして?私は相続放棄しているから返済の義務はないはずでは?

残念ながらこの主張は通りません。
なぜならそれはそもそも相続放棄ではないのです。

債権者に主張できない

このように借金を特定の相続人が引き継ぐ約束は、相続人の間では有効ですが、債権者に対しては主張できない、というのが判例です(最判昭和34年6月19日)。
なぜなら、もしそのようなことが認められるなら、わざと資力のない相続人が債務を負うように遺産分割をし、事実上、債務を逃れることができてしまうからです。
プラスの財産は相続人全員が同意すればどんな分け方も可能ですが、マイナスの財産(負債)は、あくまでも法定相続分に応じて自動的に分割されるというのが判例の考え方です。
もちろん理論上は、債権者が特定の相続人だけが債務を負うことに同意(難しい言葉では「免責的債務引受」といいます)すれば実現しますが、そんなことに同意する債権者はまずいないでしょう。

相続放棄というのは、あくまでも家庭裁判所に申立をして初めて成立するものです(民法第938条)。
Bさんからすると遺産は息子に譲るわ、借金は背負わされるわで踏んだり蹴ったりですが、残念ながら法律は知っている者の味方。
素人判断は非常に危険なので、弁護士・司法書士にご相談を。

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