北広島にこやか遺言相続相談室

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Q 遺産の中に表題部未登記の建物があります。どうしたらいいですか?

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■本来は過料10万円…?!

「そもそも表題部とは?」と思った方もいるかも知れません。
そのためまず不動産登記の仕組みを説明します。

不動産登記は、大きく分けて3つのパートで構成されています。
・1つ目は表題部
所在地・家屋番号、居宅・共同住宅等の種類、床面積といった、建物の形状に関することが登記されます。

2つ目は権利部(甲区)
ここは所有者が誰か等、所有権に関すること。

3つ目は権利部(乙区)
抵当権等、所有権以外に関することです。

不動産登記は必ず、表題部→権利部(甲区)→乙区の順番で登記されます。
どこかを飛ばして登記することはできません
表題部の専門家は土地家屋調査士、権利部は司法書士です。
なぜ分かれているかというと、表題部は測量や作図などを伴う理系資格、権利部は権利や義務に関することなので法律資格だからです。

権利部は、法令上は原則、義務や期限はありません(相続登記は3年以内の義務)。
ただしやらないと色々面倒なことになります。
ところが表題部は、実は建物建築から1か月以内に登記する義務があり(不動産登記法47条1項)、怠った場合、10万円以下の過料の対象となります(不動産登記法第164条)。
なので、「表題部が登記されている建物が遺産の中に含まれている」こと自体、本来好ましくない状態なのです。

※ちなみに表題部未登記でも固定資産税は課税されます。
市役所の担当者が定期的に、未届の建物の新築・増築がないか見回っているからです。

■現実的な方法

ここまでが前提知識です。
ここからが本題です。
先ほども述べたように少なくとも表題部は建物を建てたら1か月以内に登記しないといけないのですが、何らかの事情でそれがされていない建物がたまにあります。
いわゆる田舎の方に多い印象です。
というのも、上記で表題部未登記は10万円以下の過料の対象、と述べましたが、実際に科される例は稀だから、という事情があるからです。

このような未登記建物と土地で売買・相続が発生したとします。
この状況で、土地の方は普通通り名義変更するけど、建物の方は表題部も権利部も登記しない、売買契約書だけ交わす、遺産分割協議書だけ作るということがあります。

これは色々な理由があるんですが、建物がだいぶ古くて第三者に売却する予定もない、数年以内に取り壊す予定である、などの場合です。
私も立場上、未登記のまま売買や遺産分割をすることを推奨はできませんが、現実にはある、ということです(特に第三者に売却する予定であれば、表題部登記をしていないことが支障になるおそれが高いです)。
そしてこの場合、建物の所有権移転登記はしない、というよりも、できないわけですが、ある届出だけは3ヵ月以内にしなければならないのです。
それが、市区町村役場に対する固定資産税の所有者変更届、未登記家屋所有者変更届です(自治体によっては「納税義務者変更届」という呼び方のところもあります)。

・未登記家屋所有者変更届
対象となる物件:表題部未登記の建物
所有権移転の原因:売買・相続
提出先:市区町村役場
期限:3ヵ月以内※
※現所有者であることを知った日の翌日から3ヵ月以内(地方税法第384条の3)

これを忘れると、売買や相続の翌年度になっても、固定資産税の納税通知書が土地は新所有者、建物の方は旧所有者のところに行ってしまう、というちぐはぐな状態になってしまいます。
一方土地の方は、登記を名義変更していれば、毎年1月1日現在の所有者が誰であるのか各市町村に通知されることになりますので、特に届出は不要です。
当事務所では、未登記建物を相続した際には、表題部登記のために土地家屋調査士をご紹介するか、未登記のままにしておく場合には、未登記家屋所有者変更届の作成・届出を併せてお受けすることをご提案しています。

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