Q 相続登記の義務違反でも過料を免れる正当事由とは具体的に何ですか?
■施行以前の相続にも適用
2024年4月1日より、不動産を所有する方が亡くなった後の名義変更(相続登記)の義務化が始まります。
この義務は罰則(10万円以下の過料)つきです。
しかも制度が始まる前に発生した相続であっても適用があります。
(ただし2024年3月31日以前に発生した相続についての登記は、2027年3月31日まで猶予されます)
これはつまりこういうことです。
例えば曾祖父、高祖父などが持っていた不動産で長年、登記がされていなかったものがあるとします。
ひ孫、玄孫であるあなたはある日、その存在を何らかのきっかけで知ったとします。
するとその日から3年以内に、登記をしなければならない、ということなのです。
「えっ?!そんな理不尽な!」
そう思われるのは当然です。
ですがご安心ください。
相続登記を怠ったからと言って、一律に、問答無用で過料を科すことはありません。
実は一定の手順を踏んでから行うこことされています。
参考:2023年3月22日法務省
相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン
(以下「マスタープラン」という)
1.事前に相続登記を促す通知がある
過料を科すにはまず、法務局から事前に「○月○にちまでに相続登記をしてください」と促す通知をすることが必要です。
「マスタープラン」によると、つぎのようなケースを想定しているそうです。
①例えば遺言で「不動産1はAに、不動産2はBに相続させる」とあるのに、不動産1のみ登記され、不動産2が登記されていないケース
②例えば遺産分割協議で「不動産1はAが、不動産2はBが相続する」とあるのに、不動産1のみ登記され、不動産2が登記されていないケース
2.正当事由があれば過料は科さない
正当事由とは次のようなものです。
①数次相続で戸籍収集に時間がかかる
数次相続とは、相続人が亡くなりさらに相続発生することです。
上記のように子→孫→ひ孫→玄孫と相続が発生しているようなケースです。
②争いがある
遺言の有効性や遺産の範囲等についての争いです。
■正当事由がない場合は?
では上記のような正当事由がない場合は、どうしたらいいのでしょうか?
この場合はおそれることはありません。
相続人の誰か一人からでいいので、「相続人申告登記」を行えばいいのです。
簡易な手続でひとまず過料だけは免れることができます。
ただしご注意いただきたいので、正式手続である「相続登記」と、上記の「相続人申告登記」は、似て非なるものということです。
後者は正式な相続登記を行うまでの、一時しのぎとお考え下さい。