北広島にこやか遺言相続相談室

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Q 不動産を売りたいのですが、共有者の1人が行方不明。あきらめるしかないのでしょうか?

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■所在等不明共有者持分譲渡権限付与制度を使えば売れる可能性

複数の共有者がいる不動産は、共有者全員が売却に同意しないと事実上、売れません

例えば10名の共有者が10分の1ずつの持分を持っている不動産のうち、9名(10分の9)だけ売ろうとしても、そんな中途半端な権利を買おうと思う人はいないからです。

(もちろん理論上、制度上は、持分のみの売却は可能ですが、事実上、市場性がない、ということです)

例えば長年、登記(名義変更)が放置されていた不動産の場合、名義人の相続人がネズミ算式に増え、共有者が数人~十数人になることもありえます。

そんな中、一人だけ行方不明で所在がわからない、連絡も取れないという場合にはあきらめるしかないのでしょうか?

実は2023年4月1日から始まった「所在等不明共有者持分譲渡権限付与制度」を使えば、比較的簡易に、売却できる可能性があります。

これで長年「塩漬け」(売りたいが売れない)だった不動産が売れる可能性があります。

手順は次の通りです。

■地方裁判に売却権限をもらう

①不動産所在地の地方裁判所に申立

・所在等不明の証拠(戸籍等)提出

申立書は裁判所HPを参照

異議届出期間等の公告(3ヵ月)

③不明者の持分の時価相当額を供託

・供託=法務局にお金を預け、不明者が現れたら受け取れる状態にする

④申立人に不明者の持分を売却する権限を付与

⑤売却・登記(名義変更)等

■不在者財産管理制度より簡易だが注意点も

この制度が始まる前は、「不在者財産管理制度」を使う必要がありました。

これは不明者の代理人(不在者財産管理人)を立てて進める方法ですが、次のような点で敬遠されていたのです。

・20万円~100万円の予納金を申立人の自腹で用意する必要がある

・不明者の人単位で選ぶため、売りたい不動産以外の財産も管理の対象となる

(所在等不明共有者持分譲渡権限付与制度では、売りたい不動産単位で手続可能)

とても便利な制度ですが、注意点もあります
①持分の時価相当額の供託が必要

 (もちろん売れれば補填は可能ですが、いったん申立人の持ち出しとなる)
②3カ月以上の異議届出期間が必要

③共有が相続によるものの場合、10年経過必要

 10年は相続人間で何とか努力するか、上記の不在者財産管理制度を使うことになります

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