Q 預貯金相続手続を司法書士に依頼するメリットは何ですか?
■メリットは3つ。特に3つ目は意外?!
司法書士の相続業務と言えば、真っ先に思い浮かぶのは不動産の相続登記(名義変更)です。
ですが実は、それ以外にも故人の口座から預貯金を払戻する手続も受けることができます。
(根拠法令:司法書士法第3条及び第29条、同施行規則第31条)
では司法書士にこれらを依頼するメリットは何でしょうか?
3つ挙げていきます。
特に3番目は意外かもしれません。
■1.時間と労力の節約
これは当然と言えば当然ですが、「時間と労力の節約」です。
預貯金払戻の流れは、大きく次の手順です。
①戸籍集め
②遺産分割
③相続手続依頼書・実印・印鑑証明書の提出
司法書士がこれらを行うと、通常①~③を終え、払戻金を受け取るまで1~2か月でできます。
(②の遺産分割が円滑に成立した場合)
しかし一般の方が行うと、これ以上かかる場合があります。
①の戸籍集めについては、出生から死亡までを集めますが、複数の自治体に散らばっていることが多いので、郵送等で集めることになります※
※2024年以降、一般の方の相続に伴う戸籍集めは1つの自治体で可能になります。
また当然、銀行の窓口に行くには平日の9時~15時に限られます。
例えば北海道にいる80歳の方が亡くなり、現役として東京で忙しく働いている50歳の息子さんが、地方銀行に出向いてこれらの手続を行うには数日、有給休暇を取らなければならないということもありえます。
■2.銀行の理不尽な要求を断れる
銀行関係にお勤めの方がこれを読んでいらっしゃるのであれば失礼かも知れませんが、残念ながら窓口担当者の法律知識はかなり個人差があります。
例えば遺言で「全ての預貯金を妻に相続させる」とあれば、遺言者が亡くなった時点で、他の相続人の意思に関係なく法律上それは確定することになっています。
にもかかわらず、他の相続人の実印と印鑑証明書を求めてくる窓口担当者は珍しくありません。
それが困難だから、回避するためにわざわざ遺言しているケースも多いのに、相続人間のもめ事に巻き込まれたくないために、銀行に都合の良い「マイルール」を押し付けていると感じることもあります。
当事務所では、基本的にこのような要求は、法律上の根拠を述べてお断りします。
それでも頑なに要求される場合には、
手段A 銀行指定の手続に従う
手段B 訴訟等を行う(場合によっては弁護士紹介)
のいずれかを依頼者と協議して検討することになります。
ただしこれまでにこの段階に至ったケースはなく、理不尽な要求は全て、支店から本部に掛け合う等をお願いして解決しています。
これらの問題は、各銀行が相続手続を本部集中処理することで減少傾向にあるものの、信用金庫等ではまだあるように見受けられます。
■3.投資・保険の勧誘を回避
預貯金の相続を行うと、まとまったお金が相続人の口座に移ることになります。
これは銀行からすると、願ってもない営業のチャンスです。
過去に依頼者から聞いた話では、相続人として窓口で預貯金払戻手続を行ったところ、熱心に金融商品を勧められ、購入してしまった、というケースがあります
(朝日新聞デジタル2019年12月17日)
また必ずしも購入者にとって利益のある金融商品を勧められるとは限らず、売る側にとって都合の良い(手数料が高い)商品を勧められることもあります。
もちろん不要なら断れば良い話ですし、必要だと思うのであれば購入、不要なら解約すれば良い話です。
しかし例えば亡くなったのが90歳のおじいさんで、85歳の妻が窓口に行って手続に行ったケースを想像してみてください。
そのような判断が冷静にできるとは限らないのではないでしょうか?
これらの点とご自身の状況を比較して、お支払いいただく報酬よりメリットが大きいと感じられるのであれば、司法書士へのご依頼も選択肢としてご検討ください。