Q 相続土地国庫帰属制度の利用にあたり、相続登記は必要ですか?
■(誤解を恐れずに言えば)不要です
「相続したはいいが、こんな土地、売れる見込みも使い道もないから手放したい」
そんな要望にお応えするため2023年4月27日から始まった相続土地国庫帰属制度。
この制度の概要や手続の流れはこちらのページをご覧ください。
Q 不要な土地を国に引き取ってもらう手続の手順を教えてください
このページではもう少し細かい話をします。
それは「国に引き取ってもらう前提として、相続登記は必要なのか?」という点です。
例えば被相続人・東五郎さんの相続人・東六郎さんは、下図の登記簿の順位番号2番のように、相続登記を申請しなければならないのでしょうか?
答えとしては、「(誤解を恐れずに言えば)相続登記申請は不要」という言い方になります。
「誤解を恐れずに言えば」とはどういうことでしょう?
■相続登記”申請”は不要だが、必要書類は集めて提出が必要
まずは相続登記の手続の流れや必要書類を見てみましょう。次の通りです。
①戸籍集め
②遺産分割をし、協議書を作成して実印
③各相続人の印鑑証明を集める
④相続登記申請
このうち、①~③については国庫帰属の承認申請者が行わなければなりません。
省略できるのは④のみです。
なぜ省略できるかと言えば、「①~③の書類を提出するなら、④は国が代わりに行いますよ」(代位登記)という仕組みになっているからです。
登記簿上は次の通りとなります。
つまり「相続登記”申請”は絶対の義務ではない。しかし相続登記の手間の8割を占める書類作成・収集、その前提となる遺産分割協議自体は行わなければならない。よって”何もしなくていい”の意味ではない」ということです。
どうでしょう?
前提としての相続登記不要といっても、ほとんど手間が変わらないのがおわかりいただけると思います。
これが「誤解を恐れずに」と前置きをした理由です。
■実際には相続登記をした方が手っ取り早い
さて、では結局のところ、相続登記はすべきなのか、しなくていいのか、どちらなのでしょう?
私見としては、「義務ではないがした方が良い」という言い方になります。
なぜでしょう?
理由は次の通りです。
1.相続土地国庫帰属のため承認申請をするにあたり、数回は法務局で承認の見込みについて相談をしなければならない。この点、相続登記がされていないと、相談が毎回、「登記はしていないが相続書類はそろっている」という説明からスタートし、非効率だから。
2.2024年4月1日から、相続登記は義務化される。よって仮に相続土地国庫帰属の承認申請を断念、または申請が不承認になった場合には、相続登記はしなければならないから。
当事務所としては、これらの理由から相続登記をしておくことをお勧めします。
もちろん費用面のこともあるので、依頼者の意思を尊重することは前提となります。