Q 戸籍が近くの市役所窓口1か所で集められるようになるって本当ですか?
■本当。ただし司法書士に依頼した方が楽
相続手続の第一歩は戸籍集め。
被相続人(亡くなった方)の出生~死亡までの戸籍等(戸籍・除籍・改正原戸籍謄本)をすべて集めなくてはなりません。
取得できる窓口は原則、それぞれの戸籍等の本籍地の市役所です。
通常、出生から死亡までの間に何度か本籍地が変わっていることが多いです。
つまり全て集めようと思ったら、複数の市役所の窓口に行くか、郵送で請求することになります。
面倒ですね。
ところが2024年3月1日から、近くの市役所で、他の市を本籍とする戸籍等も集められるようになりました(広域交付制度)。
何とも画期的な改正です。
では今後は、司法書士に戸籍集めを依頼せず、自分で集めた方が楽なのでしょうか?
これは私の個人的な見解ですが、司法書士に依頼した方が楽だと考えます。
■司法書士なら1~2週間で戸籍収集可能
広域交付は、司法書士等による代理請求は対象外のため、これまで通り、遠方の市役所でも窓口または郵送で収集することになります。
「えっ?それじゃ時間がかかるのでは?」
と思われたかもしれません。
ですが司法書士は戸籍集めに慣れています。
したがって私の経験上、おおむね1~2週間程度で全ての戸籍を集めることができます(相続で最も多い相続人が配偶者・子のパターンの場合)。
では一般の方が、広域交付制度を利用して、お近くの市役所で全ての戸籍等を集めようとした場合はどうでしょう?
その時の窓口の込み具合等にもよるようですが、結構待たされると聞いています。
市役所の開庁時間に行って、全て集めるのに半日~1日。
その日のうちに終わらず、翌日、翌々日にまたがることもあるようです。
しかもこの制度開始の初日から数日間は、各市役所をつなぐシステムがダウンして交付できない状況もありました。
【重要】戸籍情報連携システムの障害について
本日、各市区町村から法務省のシステムにアクセスが集中しており、市区町村において本籍地市区町村以外の戸籍証明書の交付(広域交付)がしにくい状態となっています。
利用者の皆様に御迷惑をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。— 法務省 (@MOJ_HOUMU) March 1, 2024
今は落ち着いているようですが、またこのようなことが起こらないとも限りません。
また当然のことながら、何の戸籍をどう集めれば良いのかは、一定の知識が必要です。
こうした時間や手間を考えると、初めから司法書士に戸籍集めから依頼してしまった方が、手っ取り早いのです。
■広域交付を利用した方が良いケースとは?
では逆に依頼者ご本人が広域交付を利用して戸籍集めした方が良いケースとはどのような場合でしょうか?
端的に言えば、①司法書士が集める1~2週間すら待てないほどの急ぎで、かつ、②自分で窓口に行く時間が1~3日取れる場合に限られる、と言えそうです。
①はどんなケースとでしょうか?
例えば、相続登記未了のうちに不動産の買主が決まり、その売買と所有権移転登記(名義変更)が何らかの事情で急ぎというケースです。
しかし私の経験上、そのようなケース自体がほとんどありません。
通常、買主が決まり、売買契約をしてから、売買代金を支払って所有権移転登記をするまでには、1か月程度空けます。
なぜならその間に買主は銀行への融資申込や抵当権設定契約等、必要な準備を進めるためです。
また売主は売主で、売却に向けて建物のリフォームまたは解体等を行います。
親→配偶者or子への相続であれば、司法書士に
依頼しても戸籍集めから相続登記の完了まで、約1か月で終わります。
したがって、「依頼者ご本人が広域交付を利用して戸籍集めした方が良いケース」はほとんどないと言って差し支えないというのが、私の考え方です。
■補足
2024年4月の段階で「今、広域交付で申請すると交付が6月になる」旨言われたとのX(旧ツイッター)の情報を見つけました。
具体的にどこの自治体か、情報源は不明ですが、ご参考までに。
https://x.com/kosekitan/status/1777256833583100099