相続登記放置のデメリットとは?その1(相続人の心変わり)
■「実家は譲る」から一変。「ハンコ代が欲しい」
例えば次のような図の相続が発生したとします。
遺産は評価額1000万円の土地・建物です。
3人の相続人は話し合い、妻が相続することにしました。
ところが妻は「みんな賛成してくれているし、相続登記(名義変更)はそのうちでいいか」と先延ばしにしました。
それから2年後。
妻は「そろそろ相続登記しなきゃね」と長男・長女に協力を求めました。
相続登記で妻名義にするには、遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を添付しなければならないからです。
長女は快く協力しました。
ところが、長男は何とこう言ってきたのです。
「土地建物の評価額1000万円のうち、俺の法定相続分である4分の1相当、250万円を現金でもらわないと実印は押せない」
当然、妻は憤り、理由を問い詰めました。
「2年前と話が違うじゃない?!」
長男は言いました。
「あの時はあの時、今は今さ。娘が私立に行くことになりお金がかかるんだ。もらえるものはもらうよ」
■口約束が災い。現実には払わざるを得ない
さて、困りました。
実体的にはいったん、妻が相続する旨の遺産分割がまとまっていると言えます。
ただし口約束の状態ですと、家庭裁判所での調停等では厳しいと言えるでしょう。
弁護士に相談しても、長男の言う通り、250万円の分割代償金(ハンコ代)を払って解決するのが現実的、と言われる可能性が高いでしょう。
このように相続登記を放置するデメリットの1つとして、時間経過による相続人の意向の変化が挙げられます。
相続登記義務化により規定された罰則は10万円以下の過料です。
ですがこのケースでは、ある意味、250万円の“罰金”を取られたと言えるでしょう。
放置せず、長男の気持ちが変わる前に相続登記していれば、払わずに済んだお金でしょうからね。
不動産の持ち主が亡くなったら、すぐに司法書士に相続登記の相談をお勧めします。