Q 司法書士に相続登記をやってもらったら、不動産業者からダイレクトメールが届きました。私の個人情報が売られたのですか?
■DM業者が情報開示請求により集めたもので、司法書士は関与していません
結論から言うと、司法書士は一切関係ありません。
しばしば「依頼者から疑われた」という話を同業者から聞きますが、誤解です。
そもそも司法書士には依頼者への守秘義務がありますから、そんなことをしてはいけないことになっています。
ではなぜ送られてきたのか?
それはダイレクトメール業者が、情報公開法に基づいて、法務局から開示請求した情報をもとに送られてきたものなのです。
1.受付帳に記録
相続登記が申請されると、法務局内部にある「受付帳」というものに、①いつ②どの物件に③何の理由で名義変更がされたかが記録されます。
※不動産登記規則第18条・第56条
2.情報開示請求
業者が定期的にその受付帳のコピー開示を請求します。
※情報公開法第3条
3.登記情報調査
受付帳記載の物件の登記情報を業者が取得すると、新所有者の住所・氏名が判明します。
4.DMの発送
業者から登記した相続人に「相続した実家を売りませんか?」というDMを送ります
■登記は公開情報
「個人情報なのにそんなに簡単に取れてしまうなんてけしからん」
という声が聞こえてきそうです。
が、そもそも論として不動産登記というのは公開情報です。
なぜなら「どの物件に誰のどんな権利(所有権等)がついているのか」を公示し、不動産の権利関係についての無用なトラブルを予防するのが登記の目的だからです。
その観点からすると、少なくとも調べたい物件について、誰でも登記情報が取れる仕組み自体は否定できないことと考えます。
■2026年10月以降、DMは絶滅
とは言え、気持ちは理解できます。
特定の物件の権利関係を調べたい人が、ピンポイントで登記情報を取るのは仕方ない。
が、「一定期間内に登記された情報だけを網羅的に収集し、企業の利益に使う」というのは、ちょっと違うのではないか?
そのような国民の声を受けてなのか、はわかりませんが、2026年10月1日から、受付帳の記載する情報②物件と③名義変更理由を受付帳に記録しないことになりました。
不動産登記規則等の一部を改正する省令案の概要に関する意見募集
つまり業者は「最近どの物件を誰が相続したのか」を調べることができなくなるわけです。
まさか1つの法務局の管轄だけで何万個もある登記簿を、全部調べるわけにはいきませんからね。
これにより、DM業者のダイレクトメールは、「絶滅」することになると言えるでしょう。