Q 遺言で「相続させる」としてた不動産を生前に売ったらどうなりますか?
■遺言したがお金が必要になり…
父は生前、「自宅不動産は長男に相続させる」と遺言しました。
しかし遺言後、体が弱り、施設に入るためのまとまったお金が必要だったため、その自宅不動産は1000万円で売却してしまいました。
その後、亡くなるまでに500万円を使ったので、預金として500万円が残っています。
この場合、次のうちどちらになりますか?
①父の思いを汲み取り、長男である私が500万円の預金を相続する
②遺言はあくまでも不動産についてのものなので、遺言がないものとして遺産分割する
■遺言に反する行為は「みなし撤回」
答えは②です。
なぜなら遺言者が生前に遺言に反する行為を行った場合、その部分の遺言について、撤回したのと同じになるからです(民法1023条2項)。
本件では、「自宅不動産は長男に相続させる」と遺言したにもかかわらず、生前にこれを遺言者自ら売ってしまっているので、遺言のこの部分は無効となります。
■トラブらないためにできること
遺言した後、状況が変わって不動産を売る等の必要性が生じるのはしかたありません。
ですが遺言をそのままにしておくと、せっかく円滑・円満に進めようとした相続が思い通りにならないことになりかねません。
例えばこのケースで、長男に売却代金の残りを相続させたいのなら、次の2つの方法が考えれます。
①予備的遺言
「自宅不動産は長男に相続させる。ただし不動産を売却した場合は、売却代金から死亡までに費消した金銭を差し引いた残額を長男に相続させる」等の書き方です。
②売却した時点で遺言を書き直す
お金や手間がかかりますが、こちらが確実です。
このように不動産の遺言一つ取っても、考えるべきポイントがいくつもあります。
司法書士に相談してから遺言することをおすすめします。