Q 社長である父の株式10株の相続。法定相続分各2分の1なら5株ずつ相続ですよね?
■「5株ずつ相続」ではない
中小企業の株式会社においては、代表取締役(社長)が株式全部を持っていることが少なくありません。
株式も財産ですので、遺産として相続の対象となります。
ではその社長が亡くなった場合、株式はどのように相続されるのでしょうか?
実はこの問題、経営者でもご存知ない方が多いです。
このケースのように10株を持つ社長が亡くなり、相続人が妻A、長男Bとします。
法定相続分は各2分の1ですので、当然、AB5株ずつ相続する、と考えてしまいますが、実はそうではないのです。
実は、1株それぞれ、AB2分の1ずつの共有となる、が正解です。
× このように5株ずつ相続、ではなく
■…A ■…B
○ 1株1株につき、2分の1ずつ相続します
■…A ■…B
■会社の運営がストップ?
これは実はとてもややこしい状態です。
なぜなら会社の運営・廃業に向けた手続が一切できなくなるおそれがあるからです。
例えば(代表)取締役一人しかいない会社の場合、会社の続けるにも、やめるにも、後任の取締役を選任しなければなりません。
そのためには株主総会を開催する必要がありますが、取締役はいないため、株主が総会を招集をすることになります(少数株主権。会社法第297条1・2項)。
しかしここで問題がおきます。
例えばAが「株主総会を開きたい」と思っても、Bが無関心でこれに同意しなかったとします。
この場合、Aが1株1株に対して持つ持分は過半数でないため、総会招集権を行使できないのです(会社法第106条・民法第251条第1項)。
つまり会社は続けることも、廃業することもできず、ストップしてしまうことになります。
■ややこしい状態を解消するには
このややこしい状態を解消するには、A・B全員の合意で遺産分割を行い、誰が何株持つのかはっきりさせることです。
一般には経営にタッチしている側に過半数を持たせます。
もしAが経営に携わり、Bは一切タッチしていないのであれば、Aが全て持つのがいいでしょう。
場合によっては、代償分割金といって、Aが株式を持つ代わりにBに金銭を払う、ということになるかも知れません。
こうした事態を避けるため、当事務所では、会社設立に関与した方には、遺言で「全ての株式を○○に相続させる」旨の遺言を書くよう勧めています。
会社経営と相続、一見関係のない分野に見えますが、人間がいつか亡くなる以上、この2つは切り離せないのです。