Q 不動産が遺産の半分以上を占めきっちり分割できません。どうしたらいいですか?
■「不動産が遺産の半分以上」はモメる原因?
遺産分割は、相続人全員が同意していれば、例えば「不動産も預貯金も全て長男が相続」とする方法でも構いません。
逆に言えば、誰か一人でも「いくらかもらわないと同意できない」などと反対していれば、成立しないことになります。
ひと昔前は、「長男だから全部もらって当然」というような「力技」での「押し切り」も当然に行われていました。
しかし最近はインターネットによる情報の広まりや、権利意識の高まりもあり、必ずしもそれでまとまらないケースも多くなってきました。
ここで問題になるのが、「不動産が遺産の半分以上」のケースです。
例えば実家の土地・建物が1000万円と預貯金が500万円というのは、地方の一般家庭の相続では珍しくありません。
相続人がA・B2人、法定相続分各2分の1として、Aさんが不動産を相続すると、Bさんが預貯金を全て相続しても、2分の1には足りません。
ここでBさんが不満を言ってきた場合、どのようにしたらいいのでしょうか?
大きく分けて方法は3つ考えられます。
■1.分割代償金(ハンコ代)を払う
上記の例で言えば、Aさんが不動産を相続する代償として、自分のポケットマネーからBさんに250万円を支払うのです。
Bさんは遺産500万円+分割代償金250万円=計750万円を得ることになります。
これによって法定相続分2分の1相当額は確保されます。
難点はAさんにポケットマネーがない場合にはこの方法が取れないという点です。
■2.不動産を売ってお金を分ける(換価分割)
2つ目の方法としては、換価分割です。
1.いったん不動産をAさんの名義にする
2.売却
3.売却までにかかった経費を差し引き、売却代金の2分の1をAからBに渡す
注意点としては、遺産分割協議書に換価分割である旨を明記しないと、上記3のお金につき、贈与税が課されるおそれがある点です。
難点は、A・Bいずれもこの実家不動産に住む予定がない場合ではないと、この方法は使えないことです。
■3.配偶者居住権を利用
Aさんが故人の妻、Bさんが長男で、Aさんは引き続きこの実家不動産に住み続けたいという場合を考えます。
1.不動産を長男Bが相続する
2.不動産に妻Aさんのため配偶者居住権を設定する
配偶者居住権とは、妻Aさんが亡くなるまで※この家に住み続ける権利を、所有者である長男Bさんが保障するというものです。※10年、20年などの期間を設定することもできます
つまり2人が得るものは次の通りとなり、これによって不公平が解消されると考えるのです。
妻Aさん:預貯金+配偶者居住権
長男Bさん:不動産の所有権-母を住まわせなければならい負担
ではこの配偶者居住権をお金に換算するといくらになるのでしょうか?
これは計算がややこしいので、国税庁のホームページを参照してください。
難点は、売却時の税金がややこしいことです。
例えばAさんが施設に移るため、この不動産を売ることになったとします。
売却の前提として、妻Aさんによる配偶者居住権の放棄が必要です。
この時、長男Bさんがこれに対する一定の対価をAさんに支払わない場合、Bさんに贈与税が発生します。
なぜなら税務上、Bさんは「Aさんを住まわせる義務のない完全な所有権」を無償でもらっていると解釈されるからです。
このように遺産分割の「裏技」はいくつかありますが、デメリットもあります。
どのように分けたらいいのかわからない場合は、当事務所にご相談ください。
場合によっては弁護士、税理士の力を借り、遺産分割のためのアドバイスが可能です。