北広島にこやか遺言相続相談室

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Q 不動産の名義変更時にメールアドレスの届出が義務づけされるのですか?

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■住所変更登記を忘れた人に連絡するためメールアドレスの届出が義務に

2025年4月21日から、不動産の名義変更※をする際、次の事項の届出が義務づけされます(改正不動産登記規則第158条の39第1項)。

※具体的には所有権移転登記、所有権保存登記、所有権更正登記等

メールアドレス

・氏名の読み方

・生年月日

なぜこのような届出が必要なのでしょうか?

 

まず登記のしくみから説明します。

不動産の名義変更をすると、下図のように住所・氏名が登記簿に載ります。

登記した後、名義人が転居した際には、下図のように住所変更登記をすることになります。

しかしこの住所変更登記自体には現在、特に期限はありません。

何か別の登記(例:所有権移転、抵当権抹消、抵当権設定等)を行う際には、その前提として変更をしなければならないので、「ついで」に登記されるのがほとんどです。

逆に言えば、そのようなチャンスがなければ、住所変更登記がされないまま放置されていることも多く、これが原因で、所有者不明土地が増えてしまいました

その面積は九州とほぼ同じ面積分にまで達し、社会問題になっていたんです。

出典:法務省ホームページ「所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わります。」

そこで、2026年4月1日から、住所変更登記が、罰則付きで義務化されることになりました。
(所有者不明土地が増えた原因はこの他、相続登記未了にあるとされています。したがって、相続登記義務化と、この住所変更登記義務化は、目的を同じくするセットの政策です。また氏名変更登記も義務化の対象です)

具体的には住所変更から2年以内に登記を行わないと、5万円以下の過料を科す、というものです(改正不動産登記法第76条の5・第164条第2項)。

※過料=前科のつかない罰金、とお考え下さい

 

しかし義務化しても忘れてしまう「うっかりさん」は残念ながらいるものです。

そこで国が考えたのが、メールアドレスを届出させる、というものです。

■メールで事前に意思確認した上で職権登記

まず法務局には登記簿に載せる住所・氏名の他、「検索用情報」と称して登記簿に載らないメールアドレス・氏名の読み方・生年月日の情報が蓄積されます。

一方、我々は転居のたびに住民票を変更しますが、その情報は「住基ネット」(住民基本台帳ネットワークシステム)に蓄積されます。

この2つのデータベースを定期的に照合し、「転居したにもかかわらず、住所変更登記未了」の人を抽出して、メールで通知します。

そして「職権で住所変更登記ができますが、どうしますか?」と意思確認し、希望する旨の回答があれば、法務局が職権で変更登記を行います。
メールアドレスは、この事前の意思確認のために使われるのです。

出典:職権による住所等変更登記の手続イメージ(自然人の場合)

ところで、「なぜ事前に意思確認するのか?わざわざ断らなくても、事務的に職権登記してくれればよいではないか?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。

これにつき、上記の法務省の資料はこう書かれています。

--------------引用---------------

最新の住所を公示することに支障がある者(DV被害者等)も存在し得ることや、個人情報(プライバシー)保護の観点から住民基本台帳を閲覧することができる事由を制限している住民基本台帳制度の趣旨等を踏まえ、法務局側から、所有権の登記名義人に変更登記をすることについて確認を行い、その了解を得た時に、登記官が職権的に変更登記をすることとしている

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■施行以前に登記した名義人も任意で届出可能

ところでこの職権登記制度を聞いて、こう思った人もいるのではないでしょうか?

「便利だな。私は既に自分名義の不動産を持っているが、今後引っ越ししたとしても、登記のことまで覚えていられないと思うから、自分もメールアドレスを届出しておきたい」

はい、実はそんな方のために、実は2025年4月21日より前に相続・売買等で不動産の名義人になった方も、任意でメールアドレス等の「検索用情報」届出が可能です(「検索用情報単独申出」といいます。改正不動産登記規則第158条の40第1項)。

届出の様式等は施行直前に発表されることと思われますので、お待ちください。

添付する書類としては、住民票です(改正不動産登記規則第158条の40第8項第1号・第3号)。

このように不動産登記はどんどん改正され、変化していきます。

一般の皆さんが調べて対応するのは大変ですので、詳しくは司法書士までご相談ください。

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