北広島にこやか遺言相続相談室

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Q 不要な不動産の所有権を放棄できるようになるのですか?

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■土地の所有権放棄制度が創設されます

相続登記が義務化されるというニュースについて、こんな声が聞こえてきそうです。
「ほとんど価値のないいわゆる「負動産」(負債の負)であっても相続登記をしなければならないの?」

この「負動産」の問題は私も相続業務の最前線にいて非常に感じます。
「玉川さん、こんな土地相続しても使い道がないから欲しくないんですよ。国に寄付できないんですか?」
という相談は本当によくあります。
これについて現状は「あなたが要らない土地は国も要らないんです」という風にしか答えられませんでした。

特に原野商法で買ったような土地を相続した人には、お答えするのが心苦しかったですね。
「原野商法」とは1960年代から1980年代に横行した悪徳商法です。
これは「この近くに新幹線が通る計画があるので値上がりしますよ。今買っておかないと損ですよ」というふうに消費者をだまして二束三文の原野を分譲販売する手法です。
実は当事務所のある北海道の北広島市にも、この原野商法に使われた土地がいくつかあり、何度か相談を受けたことがあります。

ですが今回の改正では、土地の所有権放棄をし、国庫に帰属(国の物になること)すること認めます、ということになりました。
これは朗報です。

■放棄のためのハードルは高い?!

ただし全くの無条件で放棄できるわけではありません。
色々と注意する点あります。主な注意点は次の通りです。
1.土地上に建物がある場合は取り壊さなければならない
2.放棄できるのは相続or相続人に対する遺贈により得た土地に限る
3.承認申請には土地管理費10年分相当の手数料を納めなければならない
4.放棄は承認制なので、必ずしも認められるとは限らない

承認のハードルがどれくらいの高さなのか、手数料の算定基準はどうなるのか、細かいことは法律施行(2023年4月27日施行)の直前に決まるものと思われます。
一部には、「ほとんどの人が放棄を諦めるような厳しい基準になるのでは?」という悲観的な予想もあります。
こればかりは蓋を開けてみなければわかりませんし、初めてのことなので、運用状況を見て基準を変更することも考えられます。
このサイトでも、これらの情報を発信していきますので、「負動産」でお困りの方は、ぜひご相談ください。

※2021年9月23日追記
法務省が発表した資料の21ページでは、下記のような情報が示されています。
(参考)現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、粗放的な管理で足りる原野約20万円、市街地の宅地(200㎡)約80万円
あくまでも参考なので、最終的にどうなるのかはまだわかりません。今後の動向を見守ります。

■放棄するから相続登記は要らない?!

とは言え、やはり今まで認められていなかった土地所有権の放棄が認められたことは非常に画期的だと思います。
では、「どうせ放棄するのだから、相続登記は要らない」ということになるのでしょうか?
これについても上記の通り、施行直前にはっきりします。
が、おそらく放棄の承認申請をする前提として、相続登記(もしくは最低限、相続人申告登記)が必要になると予想されます。
なぜなら不動産登記法の理念として、「物権変動の過程を忠実に公示」(=順番を飛ばすのは原則NG)という考え方があるからです。
相続登記を経ずに国に帰属するとなると、亡くなった方の名義から国へ直接移転する登記となり、順番を飛ばすことになってしまいます。
ですので、いったん相続登記が必要と予想されるのです。

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