Q 自筆証書遺言を法務局で保管すると死亡後に通知が来るって本当ですか?
■本当です。実はすごいメリットです
2020年7月から始まった法務局での自筆証書遺言保管制度。
実はこれには「遺言の紛失・改ざん防止」の他、大きなメリットがあります。
それは、遺言者が亡くなると、指定した人に遺言が保管されている旨の通知がされる、という機能です。
これは次のような仕組みです。
1.市区町村役場に死亡届が出される
2.市区町村から法務局に死亡の通知がされる
3.法務局で遺言保管者に該当がいないか照会
4.該当あれば、保管時に指定された人に、遺言保管の旨を通知
これは公正証書遺言にもない機能です。
おそらく正本・謄本が交付される公正証書遺言に対し、この制度を利用すると原本を預けてしまうため、遺言があるのに、ないものとして相続手続を進めてしまうおそれが懸念されたため、それを軽減しようとしたのかも知れません。
また遺言者と相続人等が疎遠なケースだと、そもそも亡くなったこと自体を知らず、時間が経過してしまうおそれがあるので、通知制度を導入したのではないでしょうか?
■2023年10月2日から通知を受ける人が拡大
この通知制度を利用するには、保管時に申請書で通知を受ける人を指定します。
法務省ホームページより遺言書の保管申請書様式
この通知を受ける人は当初、相続人・受遺者・遺言執行者の中からいずれか一人とされていました。
受遺者=遺贈(主に相続人でない人に遺言で遺産を承継させること)により遺産を受ける人
遺言執行者=遺言の内容を実現する人。遺言で指定または家庭裁判所で選任
ですが2023年10月2日からは、相続人・受遺者・遺言執行者以外でも指定可能となります。
また人数の上限も1人から3人となります。
これ以前に保管申請した方も、変更届出書の提出により、通知先の追加が可能です。
法務省ホームページ「自筆証書遺言書保管制度について」より
これによって、次のような事例にも対応できるようになると考えられます。
事例:
1.遺言により妻に遺産を相続させたいが、妻は手続関係が苦手・高齢で理解できるか不安である
2.親族と交流が疎遠なため、死亡届を出されたこと自体、知られないおそれがある。
3.遺言執行者として指定まではする気はないが、手続の方向性を示す人はいてほしい
→妻等、遺産をもらう人とは別にこうした手続が得意な人(例:長男や司法書士等)も通知先に指定する
私の経験上、せっかく遺言があっても、何をどうしたらいいのか、誰に相談したらいいのかわからず、数か月経過しているケースも多いです。
この点、例えば不動産について言えば、2019年7月1日施行の法改正により、自分の法定相続分を超える部分については先に登記をした者の「早い者勝ち」と明記(民法899条の2第1項)されました。
したがって、遺言による相続登記より先に法定相続分による相続登記を入れられると、やっかいなことになります。
参考:Q 亡夫が遺言で「不動産は妻に相続させる」。相続登記は急がなくていいですよね?
司法書士を指定先にすれば、こちらから手続について案内することが可能となる、という点で、画期的です。
今回の改正は、相続開始後の遺言執行を円滑・迅速に進めることに役立つものになりうると考えます。